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ネット風評被害対策のすゝめ その5(たちばなブログ)

※ この記事は「たちばなブログ」に掲載したものを転載しています。

あおのです。

シルバーウィーク、皆さんはいかがお過ごしでしょうか。

あおのは、前半はがっつり仕事なのですが、後半のお休みだけは死守したいと思ってます。

さて、ネット風評被害対策シリーズもこれで最終回の予定です。

 

そろそろ飽きてきて他の記事も書きたいので(笑)。

ということで、風評被害対策シリーズの第5回目は、危機管理的な視点から見た風評被害です。

これまで、第一回目と三回目は手続きの話を、第二回目は前提となる名誉毀損の基本的な考え方、第四回目は投稿者が特定できた場合に被害者が加害者に対してとりうる手段のお話をしてきました。

最後は、そもそも何故、風評被害対策をしなければならないのか、という点を経営者の方向けにお話します。

 

風評被害対策をするためには、結構お金がかかります。

弁護士の費用だけでも数十万がかかり、一時的ではありますが裁判所に納める担保金もかかります(こちらは勝って終われば返ってきます)。

その他裁判所に納める印紙や郵券、諸々の実費もあります。

手続きに必要な社内の資料整理の手間や打ち合わせの時間もかかります。

そこまでの手間と時間をかけて風評被害対策をする意味は、どこにあるのでしょうか。

 

これは風評被害にあった場合のダメージは何かを考えることになります。

 

まずは売上の低迷です。

例えば、商品自体に関する風評の場合、商品の悪評価をみたユーザーが離れてしまい、売上が減少する事態が生じます。

そして、商品の名前で検索をされた場合、瞬間的にアクセスが増えているページを検索システムが拾ってしまうと、その商品の悪評価が閲覧されることになって購入者が減るばかりか、アクセスが増加してさらに検索上も上位に来るという悪循環を生じてしまい、負のスパイラルが起きてしまい、被害は拡大してしまいます。

 

次にそこから派生する問題として、対象となった商品が会社の主力商品である場合や、商品内容が形のない会社からのサービス提供ある場合には、当該悪評価が、会社のブランドイメージとされてしまうことがあります。

風評被害における悪評価が、会社のブランドイメージ全体に及んだ場合、実際の商品やサービスの良し悪しの問題では済まなくなり、「あの会社はダメだ」「あの会社のあのシリーズは良くないらしい」などといったイメージ・風潮が作られます。

そのイメージが社会において先入観として根付いてしまうと、会社ブランドが大きく傷付けられてしまいます。

 

そして、会社ブランドの低下から生じる問題としては、顧客離れがあります。

会社の商品には根強いファンが付いているケースも多く、多少の悪評価があっても、「合う・合わないは個人の主観」として、根強いファンが買い支え、会社のブランドや売上が維持されることが多いものです。

しかし、人は他人の評価に安易に流されますし、それが「風潮化」してしまうと更にです。

会社のブランドそのものに関わる評価が蔓延した場合、新規の顧客が付きにくくなるばかりか、これまで支えてきてくれた顧客=ファン層すら離れてしまうことになります。

また、下手をすると、可愛さ余って憎さ百倍、ファンであればこそ反射的に大きな失望に繋がってしまい、アンチファンを生んでしまうことまあります。

 

このように会社やブランドの価値が低下して既存の顧客層まで離れる自体になると、その商品の販売継続が危うくなります。

 

他方、商品ではなく労務管理やコンプライアンスに関わる評価の場合、取引停止や内定辞退など、会社の維持のための人的資源が失われることもあります。

近時のコンプライアンスに対する社会意識の醸成はめざましいものがあります。

それ自体は大変好ましいことなのですが、例えば風評の内容がコンプライアンスにも関わる場合には、いわゆるブラック企業などのレッテルが安易に貼られてしまいます。

そして、一度貼られたレッテルを排斥し、コンプライアンスを遵守している会社であることを社会に理解してもらうためには、かなりの手間と時間を要することとなり、容易とは言えません。

そのため、そのような事態になれば、社内の士気が下がって人材流出が生じたり、有為な人材の新規採用が難しくなるという事態に陥ります。

 

このあたりまで被害が広がると、風評による個別被害というレベルを超え、社会における会社の立場を劇的に変化させる被害にまで拡大しており、会社の存立にも関わります。

 

このように、風評被害は極端な場合には会社の存立にすら関わりうることがありますが、これはネット社会の性質によるところもあります。

ネット社会では、はじめは小さな投稿であっても瞬く間に伝播して大きくなることは容易であり、一度根付いたネット評価を覆すのは容易ではありません。

そして、ネットにおいて「この会社を叩いてよい(叩いてしまえ)」という雰囲気のようなものが出来上がると、匿名性を背景にした無責任な投稿が続いて、いわゆる炎上に至ります。

一度炎上すると、炎上したこと事態が取り上げられ、さらにニュースとして大きくなってしまいます。

 

会社の経営者としては、会社の危機管理として、このようなネット社会の性質を踏まえたネット風評による被害の大きさ、特にこのような被害は単発的なものにとどまらず大きく波及してしまうこと、を十分に認識する必要があります。

 

そのため、ネットにおける風評被害を受けた場合には、なるべく早期に対策を講じることが重要になります。

大きな波及効果が生じる前に速やかに投稿を削除し、次の投稿をさせないよう投稿者を特定して動きを止めます。

これにより炎上などの大きな被害を未然に防ぐことができます。

また、このような対策を講じていくことは、ネット社会において「この会社を叩いても消される」「盛り上がらない」「ウソを書くと訴えられるかも」という雰囲気を作り、匿名性に依拠した無責任な拡散をさせないという効果もあります。

 

一方で、過敏な反応をしてしまうことで逆に騒ぎを大きくしてしまうこともあり、このあたりの加減も、コントロールする必要があります。

 

全5回にわたってネット風評被害対策について書いてきました。

これらは、会社における危機管理として、特に近年のネット社会を踏まえて、念頭に置いておく必要があるものと思います。

近年のネット上の情報は、一方向に向けた議論の誘導が良いであるとともに、いったん誘導されてしまえば修正が効かず、瞬く間に拡散してしまいます。

有用であるとともに危険な面を孕んだネットの情報については、現代において重要な危機管理の対象であると認識されるべきです。