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ネット風評被害対策のすゝめ その3(たちばなブログ)

※ この記事は「たちばなブログ」に掲載したものを転載しています。

あおのです。

お盆を過ぎると、一気に暑さが和らいだ気がしますね。

このまま秋に一直線、食べ物とお酒が美味しくなる季節です。

脇腹のお肉の成長、待ったなし・・・。

 

さて、第1回目は削除の手続きを、第2回目は名誉毀損の権利侵害の考え方をお話ししました。

今回は、消すだけじゃダメ!書いた人を突き止めよう!の回です。

 

ネット上の投稿によって誹謗中傷を受けた場合、投稿をそのままにしておくとたくさんの人が閲覧してしまうため、早急にこれを削除しなければなりません。

そのためには、第1回目で解説した仮処分手続きによる削除がまずは重要です。

 

他方、新しい投稿が次々となされているような場合には、一つずつ投稿を消してもラチがあかず、イタチごっこになってしまうことがあります。

このような場合、投稿した人を特定し、損害賠償などを請求するとともに警告を与え、再発防止に努める必要があります。

そのためには、発信者情報開示の手続きが必要になります。

 

そもそもインターネットの掲示板に投稿するためには、パソコンなどの端末からインターネット回線を介して、当該ホームページにアクセスし、投稿を行うことになります。

そして皆さんは、インターネットに繋ぐためにそれぞれのプロバイダと契約していると思います。

パソコンだと、OCNだったりBIGLOBEだったり、Yahooだったりするでしょうし、携帯だとdocomoやau、SoftBankがプロバイダになります。

 

皆さんの持っているパソコンなどの端末がネットに繋げるためには、プロバイダからIPアドレスを振り分けてもらい、そのアドレスを利用して、インターネットにアクセスします。

IPアドレスは、プロバイダごとに複数所有しており(膨大な数です)、皆さんがネットに繋げるときは空いているIPをランダムで割り当てられます。

 

他方、掲示板の管理者は、自分の掲示板のあるホームページにアクセスする人のIPアドレスを知ることができますし、特に掲示板に書き込みなどをした場合には、システム上、投稿した時間や投稿者のIPアドレス(ログ)が残ります。

 

発信者情報の開示は、この構造に即して二つの段階を経る必要があります。

一つめは、削除の場合と同じく、ホームページの管理者へアプローチする必要があります。

すなわち、ホームページの管理者に対して「この投稿をした人物の、投稿日時と投稿の際のIPアドレスを開示せよ」とログの開示を求めるわけです。

交渉ではラチが明かないことが多いのは削除のときと同じですので、こちらも仮処分という手続きを用いて裁判所の決定を得ることの方が多いです。

 

ログの開示を得られたら、二つ目、プロバイダへの開示請求です。

先ほど述べたように、IPアドレスはプロバイダごとにまとめて持っていますが、IPアドレスが分かると、どのプロバイダが割り当てたIPアドレスかが、検索すると分かるようになっています。

そのため、そのプロバイダに対して「いついつ(開示された正確な投稿日時)に、どこどこ(ボームページ等のアドレス)へアクセスした、このIPアドレス(開示されたIPアドレス)を、プロバイダから割り当てられた契約者を開示せよ」と求めるわけです。

こちらは仮処分ではなく裁判になります。

 

裁判所で判決が出ると投稿者(正確には投稿された際の回線の契約者でしかありませんが投稿者と同じか親しい関係のケースが多いです)が割り出されますから、損害賠償や警告ができるわけです。

 

この手続きを考える場合、最も注意が必要なのは、時間です。

回線のIPアドレスを提供したプロバイダは、いつ、誰に、どのIPアドレスをログとして保存していますが、これらは膨大な記録となるため、順次上書きされます(プロバイダによりますが保存期間三カ月〜六カ月くらいが多いです)。

そのため、プロバイダに対する手続きは迅速にしなければなりませんが、その前提としてIPアドレスをサイト運営者から開示させる仮処分を挟むため、プロバイダに請求した時点で書き込みが古くなっていたり、仮処分に予想外に時間がかかったりすると、ログの保存期間を過ぎてしまい、発信者を辿れなくなることがあります。

また、プロバイダに対する手続きは、まさに投稿者そのものの個人情報が開示されるため、仮処分ではなく訴訟が必要です。

よって判決までに時間がかかるため、訴訟の間はプロバイダに対して問題となっているログを消さずにきちんと保存するよう、別途手続きや通知を行うことが必要になります。

 

削除の場合もそうですが、特に発信者情報開示請求は、サイトやプロバイダ・回線ごとに特色があったり、マニアックなのだけど落し穴も多い手続きであるため、経験と慣れが必要です。

どこかでポシャると投稿者に辿り着けませんので、手続きは慎重かつ迅速であることが求められます。

三回にわたり、削除と発信者情報開示、名誉毀損の成否などについて書いてきましたが、掘り下げると色々マニアックな話もあります。

あおのも知らないマニアックなところで活躍されている先生もいらっしゃいます(笑)。

次回のこのシリーズでは、マニアックなところには話を進めず、開示されたらどうするか、というお話(一般の不法行為と同じところも多い)をしたいと思います。

では、また次回!