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医療事故調査制度はどうあるべきか?(たちばなブログ)

※ この記事は「たちばなブログ」に掲載したものを転載しています。

あおのです。

去る3月20日、厚労省より「医療事故調査制度の施行に係る検討について」という検討会のとりまとめが公表されました。

 

そもそも我が国では、実は相当数の医療事故が起こっていて、一説にはその数は交通事故の件数よりも多いと言われていたりします。

もちろん、それぞれの事故の被害の程度や過失の程度などは異なるため、すべての事故が悲惨な結果を引き起こしているわけではありませんが、しかしそれぞれの事故の原因を究明し、再発防止策を講じることで、その先の大きな事故を防ぐことができます。

また、医療事故の被害にあった患者や家族は、なぜ事故が起こったのかこそが最も知りたいことです。

これは医療事故に限らず様々な事故への対応にも共通することですが、事故が起こったときにすべきなのは、事故調査を行い、事故の原因を究明することであり、また被害者に対しては事故の原因を説明し、責任があるのであれば真摯な謝罪を行うことです。

それらの過程を通して、同種の事故をどうすれば防げるのかを考え、事故を起こしてしまった医療者と被害にあった患者・遺族の苦しみを、事故の再発防止へ活かすことで、少しでも悲惨な事故を減らすことができます。

 

今般、医療法の改正等によって、医療事故の原因を究明するために、事故調査委員会の設置を法制化する運びとなりました。

法律はできたものの、具体的などんな運用をするかについては検討会議を経てガイドラインが設置されることになっており、冒頭で述べたとりまとめは、そのような趣旨で行われたものです。

 

他方、一部の医師グループ(医師会の意見ではないのが救い)からは、可能な限り原因究明の取り組みを縮小・制限しようという動きがあったことは大変残念なことです。

そのような一部の意見により検討会が紛糾し、とりまとめが座長一任となってしまいました。

 

医療事故調査は、医療事故被害者が一方的に求めるものではなく、心ある医療者の積極的な取り組みが必要不可欠です。

そして、不幸にも起こってしまった事故を医療者及び医療界自身が調査して原因を究明することは、専門的職業人である医師の責任を社会において果たすのみでなく、事故によってすれ違った患者のとの思いや募ってしまった医療不信を取り戻すことができると思います。

 

今後、パブコメの募集などを経て厚労省がガイドラインを作っていくことになろうと思います。

今後も注視しつつ必要な働きかけを行い、より良い制度となるようしたいと思います。

なお、私の所属する医療問題弁護団における医療事故調設置に関する意見等はこちらです。