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患者側代理人として(調査活動)

 新型コロナウイルスが流行し、東京では緊急事態宣言の発令が議論されています。未曾有の事態に対する不安ももちろんですが、ウイルスという新しい社会事象により、今後の社会のありようが大きく変化する可能性があると個人的には考えています。大きな被害が生じずに終息に向かうことを願ってやみません。

 

 さて、少し前の記事になりますが、私の取り扱う事件のうち、医療事件に関する患者側代理人としての活動のご紹介をさせていただきました(2015/3/15患者側代理人として(活動の目的))。今回のブログはこの続きです。

 

 医療事件について患者側代理人として活動する場合、主として、その活動は2つの段階に分かれます。まず最初に行うのは、診療経過を調査していく調査活動であり、調査の結果、医療機関に責任があると考えられる場合に初めて、責任追及に向けた活動をしていくことになります。今回は、前者の活動についてお話しします。

 

 医療事件をお受けする場合、患者さんのご相談を受けていきなり医療機関に対する損害賠償を求めるわけではありません。ご相談後、まずは調査活動を行うことが原則です。

 医療においては、医療行為によって望まない悪結果が生じたとしても、ただちにそれが医療ミスとして医療機関が責任を問われるわけではありません。医療を受ける前提には、傷病などの悪結果を導きやすい要素がそもそも存在しています。また医療そのものは、人の身体という不安定・不確実な要素を含むため、同じ医療行為がなされても常に同じ結果を生じるわけではありません。また、医療従事者は高度専門職業人であって医療行為においては裁量を有するため、特定の傷病に対して実施される医療行為に必ずしも正解があるわけでもありません。

 そのため、医療行為の結果が望まないものであるとしても、そもそもその結果が医療行為に起因して生じた問題であるのか、本来はどのような医療行為が行われてどのような結果を生じることが通常の医療として期待されるべきなのか、当該医療従事者の行為には過失があったのかなど、医学的な知見と一般の医学的水準に基づいて、医療機関が責任を問われるべき事案なのかを検討しなければなりません。医療事件のご依頼があった場合には、相手方医療機関への責任追及に先立って、診療経過の調査のための活動を行い、調査の結果、医療機関へ責任を問うべき事案であるかどうかを検討・判断するという段階を経ることになります。

 

 調査活動では、医療期間から開示を受け又は証拠保全などで入手した医療記録を精査・検討し、医学文献等によって医学的知見を確認した上で、医療の経過を検討して悪結果の原因や医療行為における問題点を整理していきます。また、第三者として見解をいただける医師(協力医)から、臨床経験に基づいた医療行為の適否などに関して意見を聞くこともあります。さらに、必要に応じて、相手方医療機関に対して説明会の開催を申し入れ、不明な医療経過の確認や医療機関における意図・認識を尋ねるとともに、本来成されるべきであった医療機関から患者に対する説明を促すこともあります。

 このような調査の結果、医療機関に責任があると判断できれば(有責)、医療機関に対して責任を追及するための交渉や法的手続を行うことになります。他方で、調査の結果、医療機関に責任があるとはいえないことが判明した場合には、ご依頼者に説明の上、責任追及を断念することになります。

 

 このような調査活動は、十分な調査活動を行うことで医療事故被害に遭った方の権利を守るとともに、医療機関に対する責任追及が適切なものとなるため、極めて重要な活動です。併せて、調査の過程において原因の究明がなされ、必要に応じて医療機関からの説明や謝罪などが得られることもあります。

 

 調査活動を経た後、患者側代理人としてどのような活動がなされるのかについては、また別の機会に。